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網戸をはめる。

網戸の張替えのイラスト

網戸を買った。

寝室には網戸もクーラーもないので夏場は締め切った灼熱地獄の中、死んだように寝てきたのである。

これだけを聞いたら、前々からうさんくさいと疑ってたけど、高森というやつはやはり人間ではなかったと再認識される諸兄もおられると思うが、私が人間であるかどうかは今回は関係ないのでその疑念は無視させていただく。

 

当たり前だが暑いと寝られない。

でもあまりに暑すぎると、諦めるのか、気を失うのか、寝られるんですね。

しかしながら、諦めの境地に達するか失神に至るかするまでには、これ結構な時間がかかるし、体力もひどく消耗するので、年々体にこたえてきていた。

おまけに地球は私に優しくない。本気で始末しにかかってるんじゃないかっていうくらい毎年最高気温を誇らしげに更新している。(ニュースのひとも興奮したように最高気温を述べるので、グルかもしれない)

 

特に、三戸という土地は、時々全国ニュースに上がるほど気温が高くなる。

こういう地で、クーラーも網戸もなく過ごしている私を誰か称えてもいいよ。

 

というわけで、ホームセンターに網戸を買いに行った。

 

網戸にはサイズがあるのよ、それもたくさん。

え~、窓の大きさってこんなに種類あるのー、と放心。

掃き出し窓用とか、トイレの窓などは分かりやすく違っているので選択肢から除外する。

難しいのが1センチとか2センチ違うやつ。

なにこの微妙な違い。

悪いけど私、違いが分からないイキモノなの。

てゆうか、JASとかALSOKとかCIAとかkfcとかの国際規格で決まってるんじゃないの、窓なんて。

品出し中の店員さんに「普通の家の窓ってこれくらいですよね」と大きさを確認してみる。

「ええと、いろいろあるんで」

なんかこれっくらいだと思うのよね、と両手を広げて検討するのを、不安そうに見守っている店員さんに言う。

「これにします」

「これにしますって、大丈夫ですか? 測ってこなかったんですか?」

「大体こんなもんじゃないですか? うちの窓」

「いや知りませんけど」

 と相談に乗ってもらって、買ってきた。

 

 取りつけようとすると、はまらない。網戸のほうが高さがある。力を入れて一心不乱にガツガツとやっていたら、やかましさに家族が様子を見に来た。

 またうちのバカ娘が何かやってると思ったようだ。

 網戸をはめてるの、と説明すると、ほっ散らかしていたビニール包装を拾い上げ、中に入っていた紙を取り出して読んでいた。

「ネジを緩めろって書いてるで」

「ねじって?」

「枠の四か所のネジ。そこで高さ調節できんだって。ほら、説明書に書いてあるじゃん」

「それ、説明書だったの」

 説明書つきなんて、網戸のくせに大きく出たものである。

「あのね、こういうのはちゃんと読まなきゃ」

「あのね、そんなのを読むより力で押し込んだほうが速」

「そうやって壊してきたんでしょぉ、今まで」

 家のひとがプラスドライバーを持ってきて、ネジを緩めてくれた。お前の頭はネジを閉めたほうがいいとつぶやいていたが聞こえなかったふりをした。

ネジを緩めると、高さが調節できるようになった。便利だなあと感心した。

 どれどれ、と再チャレンジしてみると、今度はぴったりはまった。

 レールにはめて押したが動かないので、家のひとを読んで、ネジの緩め方を間違ったんでないかいと言ったら、おまえの頭と一緒にするなと失礼なことを吐く。

 それから網戸を見て、

「はまってないじゃん。ズレてんじゃん。これ落ちるよ」

 と、はめ直してくれた。

 高さも幅もぴったりで、シャーッとレールを走る。楽しい。

 シャーッシャーッと気がすむまで走らせる。楽しい。

 

 新しい網戸を通る風はさすがに心地よい。

これで、諦観を待たなずとも、失神に至らなくともスムーズに寝られそうだ。