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髙森さんとこの工作 ③


まだまだだと踏んでいたウィンドチャイム作成の続き。

 

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増えました。

今日は、父の知人が来ました。

「よぉ」と気軽に挨拶をくれる気のいいおじさんSさん。

駐車スペースに面した居間の前で、しゃがんでごしゃごしゃやっている私を数秒眺めて

「親父いるかい?」

と訊ねる。

「いますよ」

 玄関を開けて、Sさんを通す。

 居間の薄いガラス越しに、

「娘さんは、どやしたの?」

と、Sさんの声。

「さあ」

ぼんやりしている父の声。「バリとか、へってらって」

「バリってあのフランスのか?」

「んだ」

「なして」

「分かんね。アレがやることはオラァ、ひとっつも分かんね」

という会話が漏れ聞こえてくる中、竹にSさん……じゃなくてテグスを通す。

難しい。

たかだか、穴に通すという単純な作業がここまで神経を張り詰め息を潜めなければならないのか、というほど。仕事でだってこんなに神経を集中させることはない。

今自分は外科医だ。この細い穴に、カテーテルを挿入する大手術をしている真っ最中。失敗できない。プロジェクトX。やり遂げて見せるわ、私、失敗しないので。

 

 

 

カテーテルは通らない。向こうの穴に届く前に、竹の中で曲がってしまう。

もうちょっと、穴を大きくしたほうがよさそうだ。キリで穴を開ける。

「お」「危ね」「あれさ、抜く時が危ねんだよ」「気をつけで」「ちゃんと竹ばおさまえねンば」「ああ、ほら」「じゃっ、おっかね!」外野がうるさい。

見れば、二人してガラスに張り付いてこっちを観察しているではないか。野生動物を観察する研究者のようである。

私は訴えた。自分は今外科医で、この細い穴に云々。

話している間に彼らはガラスから離れた。

 

にしても、

ただ単に、風鈴を作るということである。

それを中年女が数日にわたって血道を上げて取り組んでいるなんて、狂気の沙汰ではないだろうか。

え。患者? と、ご指摘があろうかと存じますが、無視します。

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テグスを通しました。

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こんな感じ

 

できました。

 

長さがまちまち。

結束バンドを使いました。結束バンドを使ったのは初めてです。穴に通して引っ張っただけでしっかり固定されるので驚きました。

 父たちの会話が聞こえてきます。

「フランスっつうより、南の、アマゾンだのカメハメハだのの雰囲気だねえかい?」

「だどもアレはぁ、バリだってへってらって」

 フランスにバリはないが、特に支障はないのでバリだろうとジャングルだろうと亀仙人だろうと、黙っておく。

 

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かんせーい! ※仕上げでカッターで削った時に指をやりました。

お見苦しくてごめんなさい。

本来ならばここに音を載せたかったんですが、うまくできませんでした。

ごめんなさい。

でも、竹と竹がぶつかる音です(当たり前ですが)。

バリからは以上です。

 

ここまで三回にわたりお送りさせていただきました。お読みくださいましてありがとうございました。