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カレーを食べようと思ったのである。

黄色いカレーライスのイラスト

 

上記が理想のカレー像であることをお心に留めておかれたし。

 

さとうのごはんを切らしていたので、真面目な私は飯を炊こうと米を研ぎ、炊飯器にセットして、浸水時間を取りつつ、うたたねをした。

目を覚ましていい塩梅に腹が減り、ご飯のスイッチを入れて炊きあがるまでにペンギンがよちよち歩いたり、転んだり、滑ったり、どつきどつかれたりしているほのぼのしい動画を見て時間を潰す。

炊飯器の「炊けたでー」という音に呼ばれて、

いっざ進めぇやキッチーーン! と意気揚々血気盛んに踏み込んだ台所で、私は驚愕の事態に直面することになるのだがこの時は知る由もない。

 

レンジにカレーを入れ、スイッチオーン。

器を用意し、水を用意し、スプーンを用意し、もうあと用意するのは飯とカレーを食べる心構えと、カレー口のみ。

そして、私、器としゃもじを手に炊飯器オーーープン!

 

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「わあ、底が見える―」

 

レンジ、ぴーぴーぴーと加熱完了を高らかに宣言している。

癇に障るほどの陽気さ。

オリンピック開催よりも高らかな福音。カレーの祭典といってもいいくらいご機嫌に宣言している。ヤマザキ春のパン祭りよりも、タカモリ梅雨のカレー祭りである。

なのに、目の前には。

 

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「わあ、底が見える―」(大事なことなので再掲)

 

 

とりあえず私、器としゃもじを置きました。

部屋、戻りました。

戻って、布団に横になりました。 

こういう時の行動って理屈じゃないんです。

 

えなにこれまじでなになになにまじでなんでなんですかこれ霊かな心霊現象かな妖怪かもしれしれれれれれれれれれれれれれれれれれれのおじさんとか。

落ち着こうまずは落ち着こう。生き残ったやつらに共通していたのはパニックにならず落ち着いていたやつらなのだだだ。

 

深呼吸。

とりあえず。

現実逃避入りまぁす。

 

かつて蹴躓いた時に咄嗟につかまって引きちぎり、電灯ごと総取っかえした電気の紐の揺れをしみじみ眺める。

これまでの人生を振り返ったりなんかする。

 

ハッと気づきました。

 

ニュートンがリンゴから重力を発見した時のようにそれは電撃的な気づきでした。

自分は大まかに見積もって「髙森美由紀」という人間ではないだろうか、という気づきと同じくらいの気づきだったのです。

 

 

 

「米をといで炊飯器にセットしたのは、夢であった」

 

 

この後、ルーだけ食べました。食べたというか、飲みました。

何しろお口はすでにカレーになっているし、水も用意しているし、足らないといったって、せいぜい米と私の脳みそだけなのですからルーだけでも入れなきゃ気が収まらない。

 

「なんかこれって離乳食というか、介護食というか」などと思いながら涙と一緒にしょっぺえカレーを飲みました。

 

 

炊飯器に質問なのですが、

「米も水も入ってない状態であなた、炊飯してておかしいと思わなかったんですか!」(国会答弁風)