突然の告白。
おむすびが好き。
さて、新刊のご紹介です。
舞台は青森県。
本書の内容を力技でぎゅっと握るように言ってしまえば、
キッチンカーでおむすびを販売する短編集です。
主人公は私と違って、小食女子です。
食べたい気持ちはあるのに、ちょっとしかお腹に入らず、そのせいで割を食ってきた女性です。
書くにあたり、そもそも少食がどんなものか、リサーチから入ったのを覚えています。
キッチンカーということで、県内の名所を回ります。
1章は種差海岸。芝生が整備されてとても美しい場所です。
清々しい芝生の緑。
目に染みる波の白。
透明感のある空の青。
ウミネコが自由に舞っています。
ここで、主人公の女性・茉奈とキッチンカーの店主・柴田が出会います。
柴田は不愛想極まっています。書いていて笑っちゃったくらい不愛想ですが、一方で笑っちゃうくらい可愛い(当社比)ところがありました。
茉奈は勝ち気で闊達、明るい突っ込み役です。
茉奈が苦手な食材からのスタートです。
2章は秋。階上町にある銀杏木窪の大銀杏の下での販売です。この銀杏、樹齢推定1,000年の堂々とした巨木で、青森県指定の天然記念物です。実際見に行くと圧倒されます。迫力満点です。地を這う枝が臥龍に見えるカッコよさもあります。
私が行った時はちょうど葉っぱが黄色く色づいており、あたりの空気まで黄金色に染めていました。
大きいのにしん、と静かで(木が大きいからと言ってやかましいということもないのですが、なぜか「大きいのに静かだ」と思いました)、時折、梢から鳥の声が聞こえていました。
ここで、茉奈たちが出会った老夫婦のお話です。私が愛してやまないワンコも出てきます。ワンコ、可愛い。めっちゃ可愛い。
3章は冬の小川原湖のワカサギ釣り。三沢市の北にある大きな湖。毎年たくさんの釣り客がやってきます。八戸市からは車で一時間くらいでしょうか。
茉奈の後輩と、茉奈の先輩、それから会社の縦社会が絡んできます。彼らのやり取りを眺めながら、あ~あなんてこった、と思いました。
ちなみにこの章に登場するシーンに関して、三戸消防署さんにもお話をうかがいました。ご丁寧に教えてくださり、誠に感謝申し上げます。ありがとうございました。
(取材は、いつになっても慣れない)
4章は春。店主・柴田がキッチンカーをするに至った経緯が明らかになります。また商売は一筋縄ではいかぬものだし、だからこそそのトラブルを攻略した暁には、別な世界に立てるらしい、というのも、ああだこうだともがいたり工夫したりする彼らを見つめながら知りました。
茉奈がかつて取り組んでいて、今はもうやめてしまったことを思い出して、楽しみながら(←これ大事)再挑戦していく様にもご注目。
個人的には、茉奈が不愛想王の柴田に、畏れ知らずなツッコミをガンガン入れていくところが好きです。
各章ごとに、象徴する具が登場します。いずれも青森県産です。食べ物が育った土地で、そこの風や日差しの中で食べると一層おいしいですよね。
編集のMさんとはこのお仕事が最後です。
「柊先生」から数年にわたり大変お世話になりました。優しくて温かく、しっかりとしたご指示をくださいました。何より、殴られてもしょうがないポンコツな私を殴りはしませんでした(殴りたかったかもしれませんが、Mさんはおとなでした)ありがとうございました。心からお礼申し上げます。
つじこ先生には、温かみがあり爽やかで可愛らしい画を描いていただきました。大感謝です。ありがとうございます。
「養生おむすび『&(アンド)』 初めましての具材は、シャモロックの梅しぐれ煮」
2023年7月20日、集英社から発売です。
どうぞよろしくお願いいたします。