『お山の上のレストラン 七歳児参りのふっくらムニエル』は、2019年に発刊された 山の上のランチタイムの文庫版である。
単行本が文庫化されるのはこれが初めてでとてもとても嬉しい。
書き手としては、飄々とした店主の登磨に手を焼いた記憶がある。美玖のほうがよほど書きやすかった。
彼らがレストランを営むのは、葵岳。
こちらのモデルは、低い山だが難所もある地元の実在する名久井岳。名久井岳は周囲の山々と肩を組んで連なっている山である。横に広く伸びている。
子どもの頃、登った記憶がある。鎖場という、巨大な岩に杭が打たれて、つかまるための鎖が用意されている場所がある。そこを登るのが面白かった。
見晴らしがいい頂上の、新品の風を受けるのが気持ちよかった。体力を使い果たして食べる弁当は極上だった。
おやつは500円以内と決まっていて、当時はやっていた「ねるねる」という駄菓子を持って行った私は「なんで山の上まで来てこんな労働をしているんだろうか。こんなに疲れてるのに」と腑に落ちない気分になりながらねるねるしていたのを覚えている。
こちらの文庫には、単行本には未収録のあとがきを寄せさせてもらった。
私がいかに料理ができないかを具体例を挙げて切々とつづっている。涙なくしては読めない文章になったと自負している。
デザイナーの田中久子さん、挿画の小池ふみさん。温かみがあって軽快でそしておこげまでおいしそうなデザインと画をありがとうございます。
的確な修正をくださり、伴走してくださった編集のYさん、いつもありがとうございます。頼りにしてます。
お山の上のレストラン 七歳児参りのふっくらムニエル は中央公論新社から2024年2月25日発売です。
どうぞよろしくお願いいたします。