カセットテープが入ったままになっていたので再生したら、伸びに伸びた心霊現象のような音を発した末に、死んだ。
テープを取り出そうとしてボタンを押したが、ふたが開かない。
片っ端から押したけど、カセットのほうはうんともすんとも言わず、代わりにCDのふたが開いた。
ふたを閉める。
困ったなあ。
これはもう困っちゃったなあ。
あなたを私の手で更生させて見せるわ! と意気込んで。
おかしいな。どこも悪いところは見当たらない。
鼠が齧ったり、象が挟まっているなどもない。コロナに罹っている様子も見られない。
錆びているところは数カ所あったが、たぶん、関係ないだろう。
私の判断はいつだって正しい。
ま、組み立て直してカバーをはめたらきっと、魔法のように直っているだろう。
なにしろこの私が点検したのだから。
そしてカバーを元のようにはめていく。
ところが、すっとこどっこい。
家の人に知られると「だから工具箱は隠しておけって言ったべさ」「だって手元にないと困るべさ」などといい合って、家の中が不穏になるので、
これを隠蔽すべく自室の隅に置いておいたら、物の1時間とたたずにあっさり見つかってしまった。それはもう、流れるようなそうなってしかるべき露見であった。
私の部屋は、なぜか出入り自由(家族も、野良猫も、カナブンも)になってしまっていたことを忘れていたのである。