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CDラジカセの修理

ラジカセのイラスト

 


物置をお掃除していて、昔のCDラジカセを見つけた。
CDは音が飛ぶ。
カセットテープが入ったままになっていたので再生したら、伸びに伸びた心霊現象のような音を発した末に、死んだ。
テープを取り出そうとしてボタンを押したが、ふたが開かない。
片っ端から押したけど、カセットのほうはうんともすんとも言わず、代わりにCDのふたが開いた。
ふたを閉める。
 
 
困ったなあ。
これはもう困っちゃったなあ。
 
うちには、奇跡かというほどドライバーがある。

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工具箱だって当たり前の顔をして3つある。中が二段になってるでかいやつ。鉄のやつ。
ちなみに、バールもある。ノコギリもあればナタだって順番待ちしてる。
 
ドライバーがあるということは、これはもうやれ、ということだろと、察しのいい私は捉え、ネジを片っ端から外していった。
あなたを私の手で更生させて見せるわ! と意気込んで。
 
カバーが取れないところや、指が入らないところは、チンパンジーと同じくらい賢い私にとって苦もないことで、ドライバーをテコにしてこじ開けた。
妙な音がしたが、聞かなかったことにすれば問題ない。
 

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おかしいな。どこも悪いところは見当たらない。
鼠が齧ったり、象が挟まっているなどもない。コロナに罹っている様子も見られない。
錆びているところは数カ所あったが、たぶん、関係ないだろう。
私の判断はいつだって正しい。
 
ま、組み立て直してカバーをはめたらきっと、魔法のように直っているだろう。
なにしろこの私が点検したのだから。
 
そしてカバーを元のようにはめていく。
 
ところが、すっとこどっこい。
 
 
どうしてもはまらないネジが3つあった。
 
カバーがカパカパ笑う。
 
渾身の力で蹴り込んだら、プラスチックがパーンと景気よく割れて、バネみたいなのが吹っ飛んで、私の耳をかすめていった。そして何かを引っかけるような突起が折れ、バネみたいなのが飛び出てぶら下がっちゃって… 
つまりは、まあ、業界用語で「再起不能」になったわけだ。
 
 
家の人に知られると「だから工具箱は隠しておけって言ったべさ」「だって手元にないと困るべさ」などといい合って、家の中が不穏になるので、
これを隠蔽すべく自室の隅に置いておいたら、物の1時間とたたずにあっさり見つかってしまった。それはもう、流れるようなそうなってしかるべき露見であった。
 
私の部屋は、なぜか出入り自由(家族も、野良猫も、カナブンも)になってしまっていたことを忘れていたのである。