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健康診断は、牛だの羊だのになった気分。

 

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健診でした。

 

身長体重、耳、目を計って、小便と大便を供出し血まで抜かれ、ばくちで負けたかのように身ぐるみはがさた気分です。

毎年、私は前世で何か悪いことをしたのかもしれない、と記憶にない前世の行いまで反省する機会が、THE健康診断。下手な坊主の説教より、よほど私にとっては効く。

 

心電図、お医者さんが「おかしいなあ、おかしいなあ」と頭をひねって、何度も吸盤と大きな洗濯ばさみをつけかえて、挙句の果てに「力抜いてます? 抜いてくださいね」と疑われる始末。

抜いてますよ。何なら明日の朝まで寝てたっていいんですよ。私ここでこうして寝てますから、先生、私の代わりに胃カメラ決めてきてください。

 

 

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何回かやり直して、ようやく納得されたようでこれは終わり。

次は、どこどこへ行け、と番号の書かれた紙を手に会場をうろつく。

そこはかとなく、食肉用牛や羊になった気分。

 

さあ、来ました。

何がハイライトって、あなた、間違いなく胃のレントゲンでしょう。

待ってました年に一度の胃の記念撮影。

 

私はこれで、バッチリ酔ったんです。酒なんていらないよ、バリウムで酔うんですよ。バリウム一発決めて、グルングルン回されたら、アルコールなんてしなびたものいらないんですよ。

 

嘘です。酒のほうがいいです。

 

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あのバリウムなんとかなりませんか。なんであんな石灰溶かしました、なの。

あれ目の前でなんやかんややって紙コップに入れて出してくるんだけどね、そのお医者さんの背中がいくらバーテンぽくたって、出てきたのは石灰だからね。紙コップに入った。「あれこの紙コップ、尿検査でも見たことあるやつじゃね」って一瞬、頭をよぎってさらに自分で自分の具合を悪くするやつ。

バリウムなんて人間が飲んでいいものじゃないでしょ、常識的に。それをさあ、医者が飲めって出すんだぜ。

ホットケーキになる前の生地のほうがまだ飲めるよ。

 

「はい、イッキにぐーっとやっちゃって。はい、いーっきいっきいき」なんて拍子つけられたって喉通っていかないんだもの。よくばりハムスターみたいに、ムンッとほっぺた膨らませてそれっきり。落ちてかないの。横でめちゃくちゃ励まされてこれ何やってんの私、ってなるの。

「 ウェットティッシュ、切れちゃったから、これでよろしくね」

と、水で濡らしたティッシュ渡されて、そんなもんだよな、と思いながら、鼻の下を拭って、代わりにティッシュの繊維をくっつけて。

そこから、新幹線の便所みたいなドア開けて中に入れば、あらまあ、宇宙飛行士訓練室みたいなのがでーんとあるわけです。

 

そんで、あのかったいベッドが倒れて、頭がずれて、脳天をベッドの天井にガッツンガッツンぶつけて、横向け、ぐるっと回れ、うつ伏せになれ、右向け、左向け、もう一回回れ。

もう、ワンと鳴けって命じられたら鳴いてやろうと準備までしたわ。

 

ベッドも回るから、もはや、右がどっちで時計回りがどっちで左がどっちなのか分かんなくなって、マイク越しに「はいそっちは左ですね~」と半笑いされ、服は捩れギュウギュウに締まる。でも私、今から宇宙飛行士になるんだからこれくらいじゃへこたれないわ、と気を確かに持ったところで、

「はい、いいでーす、おつかれしたー」

と外に出されました。

放牧です。