今日、学生時代の授業を三人で懐かしく語り合った。学年はバラバラだが、
割と覚えてるもんだねえ、と言い合う。
A「ハンダごてを使った技術の時間があったよね」
私「回路で電球を点灯させるやつな。あったねえ」
話を合わせながらも、クラスで私だけ、つかなかったのを思い出した。お先真っ暗のように、シンッとした力強い暗闇のままだった。
B「乾電池で車を走らせる実験やったよね」
私「手作りのやつだ。くるくるした回路がついたやつ」
私だけ、走らなかったのを思い出した。その先の人生がにっちもさっちもいかないように、ビタッとして動きゃしなかった。
A「顕微鏡で覗くやつ理科の実験さあ」
私「……」
もう勘弁してくれ、私が何をしたって言うんだ。
カバーガラスを破壊し、分銅を排水溝に流し、試験管を割って、
アンモニアをこぼし、そこいらじゅう小便臭さで満たし、吹雪の日に換気をさせてあげただけじゃないか。
人体模型の話に移ったが、私はあまり覚えていない。学校の怪談では中心人物的役割を担うイケメンヒーローなのに。
興味がなかった。怖いと思ったこともない。
銅像の鼻の穴に指を入れて抜けなくなったことが怖いといえば怖かったかもしれない。
私は一生、銅像の鼻の穴に指を突っ込んだまま生きねばならぬとかと軽く絶望した。救いだったのは、突っ込んだのが尻の穴じゃなかった程度だ。
あの時は、焦ったために指に汗をかいて抜けたはずだ。よく覚えていないが、少なくとも今私はこうしてキーボードを叩けているのだから、指は抜けたはずである、この指と、くっついている神経が、私のものであれば、の話だが。