※ ワナビー…何かに憧れ、それになりたがっている者のこと。上辺だけ対象になりきり本質を捉えていない者として、しばしば嘲笑的あるいは侮蔑的なニュアンスで使われる。
※ワラビー…カンガルーの小っちゃいやつ
私はつい最近まで、
ワナビーをワラビーと混同してきた。
別に不便はなかった。
分からない言葉があっても、私にとってワナビーもワラビーもめったに耳にすることはなく、あってもなくても私の人生にはさして影響しない言葉だった。
そういう言葉は多い。
それが、たまたま何かの啓二か、
「はっ」と真実を知らされることがあり、
冷や汗なのか脂汗なのか更年期症状の汗なのか、
ゾッとした拍子に何らかの汁が出る羽目になることがある。
随分な年月が経つから話せるけど、
暮らしの小説大賞という文学賞をいただいた時に、
目の前のテーブルにはいくつものICレコーダー。数人のインタビューアー。
それで、私は当たり前の顔をして
「しいのひとたち」と言った。
言っちゃったんだよ、ICレコーダーと数人のインタビューアーに。
本当は「市井(しせい)」である。
記憶力が鶏より悪いこの私が、この件を覚えているのである。
赤っ恥は1週間に8日のスパンで掻いているので、掻いた端から忘れていかにゃいろんなところに支障をきたす私が、これだけは未だ覚えているのである。
この手痛い恥を掻いたにもかかわらず、
学ぶということも、めげるということもなく、
私は毎日、順調に恥の上塗りを重ねている。
ちなみに、ワナビーとカンガルーの違いは、単に大きさだけ、というざっくりしたものらしい。
近いところを跳んでるのを見て、カンガルーだ! と認識した直後に、遠ざかっていけばそれは、ワラビーだ! になる、という考えでよろしい。
これって別に、恥の上塗りにはならないよね?
★まったくの余談だが、先日、お菓子の名前を思い出せずに
「あのほら、黄色いカブトムシの幼虫で、ピーナッツが入ってるやつ」
この説明で、それが
「キャラメルコーン」
だと、察してくれた知人は偉い。