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お勧めの③

昨日の続き。

エコバッグを持つ人のイラスト

 

数年前のこと、押しの強い善良なご婦人に「お相手」を紹介された。

スーパーマーケットにての立ち話。

 

「……はい?」

 寝耳に水で、私はここぞとばかりに純真無垢な感じで聞き返した渾身の「はい?」である。

 相手は私の上を行く純真無垢さで、にっこりする。

「とっても誠実で真面目で、いいひとなのよ」

 おばさまは、老後ひとりだと寂しいでしょうとか、不安でしょうとか、伴侶がいると心強いわよとか、まくしたてている。

 

 お相手と言っても、疑っていた「教祖」ではなさそうだ。

 

 私は薄ら笑みを浮かべて、あいまいに目を逸らす。

 帰りたいよぅ。

 この状況何。

 いかついな。

 えっぐいな。

 どういう流れでこういう話になっていたのだ。記憶がない。もしや、無意識のうちに1ダースくらい飲んじゃったんじゃないだろうか。会計もしてないのに。

 背後に隠したかごをチラリと見やる。未開封のアルコール、ある。大丈夫、開けてない。

 

「その方は、あなたより、ちょっと年上で頭が薄くてぽっちゃりさんなんだけどね」

 年がいっててもハゲてても、デブでもブスでも足が臭くても脂っぽくても、そういうのはどうでもいい。

 それよりも、もっと重要なことがある。

「ああ、ええと。多分、その方が私に対して『ちょっとこのひとは無理』ってなると思うんですよね」

 ほかのひとができることが、何一つまともにできねえこんな人間、誰だって遠慮したいだろう。犬のほうが、言うことを聞くだけマシである。私は言うことさえ聞けないのだ。私ができることと言ったら、せいぜい、相手に恥をかかせることくらいです(断言)。

 それを私基準で、精いっぱい丁寧にお伝えしたら、ふふふ、とお笑いになった。

 

 

 

 

続く――。