青森県にて小説と児童文学を書いています。  著作物は、右サイドバーの著作物一覧からご確認いただけます。よろしくお願いいたします。

お勧めの①

先日、仕事帰り、家路をぺたぺたと向かう私の近くにクルマが止まり、妙齢の女性が降りてきたかと思ったら、呼び止められた。

 

その方を見てすぐに、数年前の出来事を思い出した。

 

 

スーパーで買い物中の女性のイラスト

 

数年前――。

スーパーで突然、話しかけてこられた妙齢の女性。当時から妙齢だった。

体の線が出るハイネックシャツと、スキニーパンツをお召しになっていて、どちらも黒。背筋がスッと伸びで、バレエでもやってきた方なのかと検討をつけた。

「あたし、前にあなたがスーパーでレジ打ちしていた時から見てたのよ。ずっと話しかけたくてね、うふふ」

大変明るく、全く訛りのない言葉。

口ぶりに品がある。

私は、あどうもどうも、と愛想笑いを返す。

彼女は、私の名前を知っていた。

小さな町のためそういうことはよくある。

よそで何を言われているのか分かったもんじゃないけど。

どうせろくでもないことだろうから、私はうわさには耳をふさいで生きてきた。知らないうちはご機嫌でいられる。

 

おばさまは私の身辺調査をしてきた。

年齢、家がどこか、どこに勤めているのか、既婚か独身か、家族構成、など。

聞かれるままに答えて、なんで私は答えてしまうんだと、答える傍から後悔を積み重ねてゆく。

 このままではクレカの暗証番号も聞かれてしまうんじゃないか……。

 そういう心配もあったが、すぐに、私はどのクレカがどういった暗証番号を使っているのか、手帳を見ないと分からない、そして今手帳は手元にないということに気づいて安堵する。よかった、私が混じりっけなしの馬鹿で。

 

品はあるが、押しが強いこの女性。ほのぼのした笑みを浮かべてぐいぐい来る。押し売り善人(口が悪くてすみません)のお手本のようだ。(あ、このキャラ、使えるな。そしてこれ、ネタになるんじゃないか?)

お人柄はいいんだろう、でも私、ぐいぐい来られると腰が引けるたちでして。

 

で、10分くらい立ち話をして、というか私はすっかりお得意の上の空で、

ハッと気づくと、

相手は

「あなた心が純真無垢で、優しいでしょう。あたしには分かるの」

そうおっしゃっるに至っていた。

 

ぴんときた。

 

宗教。

 

これ宗教のやーーつーー。

 

続く――。