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児童室の純朴なハイライトと選挙

東京で選挙があった。

何を隠そう、うちの町にも選挙、あるんですよ。

 

すごく昔、

選挙会場から出ると女性記者さんが張っていて、どの政党に投じたかを聞かれた。

 

相手が記者と言うだけで私はドキドキして、頭パーーンとなって、

自分がどの政党に入れたのかとっさに思いだせず、頭の中にあったのは連日〇〇の一つ覚えのように繰り返され刷り込まれていた選挙カーの「自民党」と「社会党」。

 

緊張して泡を食いながら答えた「邪民党!」。

 

 

よろしくお願いいたします髙森です。

 

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うちの図書館は、

児童室と一般室が完全に分離している。

 

ご来館の子どもは小1になったばかりの女の子。

「あのね、おかあさんが あっち(一般室)にいって ごほんえらんでくるから おるすばんしてていいですか」

と聞いてきて、貸し出し処理した絵本を膝の上に開いて10分ほど静かに読んでいた。

 

あんまり覚えてないけど、私が小1の時は、たぶん鼻垂らして口開けて空とか虫とか動物とかを目で追うのがせいぜいで、そうは語彙を持たなかったと思うけど、こんなにちゃんとした長い文章を、しかも余所行き用の言葉をしゃべるんだ、とすっかり感心した。

 

しかも静かに読んでいるのである。

 

まあ私も静かってことに関しては、始終ぼうっとしていたから静かっちゃア、静かだったと思うけど。

でも、本を読んだかと言えばどうだろう。覚えていない。

ひょっとしたら、本は軽トラのおじさんにあげると便所紙をもらえるものとか、ヤギの食べ物とか、寒い日に温まるもの、という認識だったかもしれない。

 

お母さんが入口から顔を覗かせ、「〇〇」とそっと呼ぶと、その子はお母さんの声が自分の名前を呼ぶ小さな声を確かに拾って、絵本から顔を上げた。

 

そのうれしそうな笑顔といったら。

 

絵本を閉じて、椅子からヒョコッと飛び降りると、カウンターに来て、

「じゃあね」

と私にちっちゃい手を振る。

「じゃあね」

と振り返す。

「またね」

「また来てね」

「うん」

 

 

お母さんが自分を迎えに来てくれ、誇らしげ。

最後までにっこにこで、その顔でお母さんを見上げて一緒に帰っていった。

こういうのがね、子どもって、子どもって。