ビールじゃないよ。
児童書だよ。
八戸市で毎年2/17(今年はどうなるのだろう。)から行われる豊年祈願の神事としての芸能で国重要無形民俗文化財 に指定されているえんぶり。その中の「えびす舞」に挑戦する小学5年生男子二名のお話。
このたびの「ふたりのえびす」は、先に発刊していた「いっしょにアんべ」「ケンガイにっ!」の流れを汲んだもの。
2作の先発隊は、青森県の南部地方と呼ばれるところを話の筋に組み込んでいる。
これに、もう1作を加えて「南部3部作」としようというお話が出たのが、かなり前。
なかなか本にならなかったのは、ひとえに私の力不足。特に取材が苦手のせいだ。
知らない人に声をかけられたらダッシュで逃げろと教えられた世代だ。よって、知らない人に声をかけることに抵抗がある。
資料のみでなんとかならないかと試行錯誤していたが、なんともならなかった。
なので、決死の覚悟で八戸市教育委員会様に縋りつき、新井田仲町えんぶり組の代表親方・上野 弥(うわの わたる)氏を紹介していただいたのだ。
コロナのために、取材は電話。
ご紹介くださった八戸市教育委員会様、朝だろうと夜だろうと、思いついたら即電話、出物腫物ところかまわずといった無節操な電話攻撃にも、ぶち切れることなくご丁寧に教えてくださった上野様、誠にありがとうございました。
さて、今回の「ふたりのえびす」を書き出すとっかかりについてちょこっと触れさせていただきたい。
3部目をどうしたもんか、と考えていた時、たまたま新聞で、自分の作ったキャラで自身が苦しめられているという小学生の記事を見つけた。
そこから主人公ができた。
主人公のキャラの輪郭をくっきりさせるためのサブキャラも思いついたが、サブというより、w主役にしようと思った。
青森県は南に位置する漁業が盛んな市・八戸の郷土芸能を噛ませようと思った。
えびす舞という滑稽な舞を踊ることになったふたりの少年。初めはお互い馴染まなかったが、練習を通し、互いに相手の過去を知るにつれて歩み寄り始める。自分を見つめ直し、周囲の子の反応にもどかしさを感じたり、親方に反発したり、先輩たちの意地悪にくじけそうになったりしながらも、徐々に練習に対して積極的になっていく。
何度か訪れる危機に立ち向かい、いよいよ立つは厳冬の大舞台――。
本作は、「作ったキャラ」を否定するものではない。
キャラに、自分をまるっと明け渡すのではなく、かといってきれいさっぱり排除するのでもない。
何しろ、そのキャラの成り立ちは、少なからず自身を守る鎧やシールドであったのだから。
挿画の太田麻衣子さま。力強く、はっきりくっきりした迫力のある絵をありがとうございます。躍動感があり、イメージの上を行っています。華やかなお祝いの雰囲気が満々としていて、嬉しい限りです。特に、蕪島(かぶしま)での釣りの場面は「まさにこれこれ!」と頷いてしまいました。
そして、丁寧なご指導&ゴールまで常に伴走してくださった編集Hさん、とても心強かったです。ありがとうございました。
【本日発刊】#フレーベル館「ふたりのえびす」よろしくお願いします。