中学生2名の職場体験があった。
仕事始めまずは、お昼ご飯はどこそこで食べてくださいね、ということと、お手洗いに行きたくなったら遠慮なく行ってください、ということを伝える。
特にお手洗いは、我慢してしまう子があるのでしっかり告げる。
掃除とミーティングが終わったら実務に入る。
本の貸し出し返却作業、たまった新聞の運搬、スクラップブック作りとか、新刊登録、本の装備、掲示物を作ったり、移動図書館の本を選定したり。
楽しかった。
すっかり初心を忘れて毎日ドロドロの気分でやってきたおばちゃんは、清らかな水で洗われた気分だった。
教えればそのまま素直に実行する子たち。
物覚えが速くてたまげた。
「私がねえ、〇ちゃんたちくらいの頃はねえ、一を聞いて十を知るどころか、一を聞いて十忘れたもんだよ」
と話した。
どちらも笑わなかった。真面目な顔をしていた。メモを取ろうとしたので押しとどめた。
今は一を聞いて五十は忘れると明かさなくてよかった。
本の装備で難しいのは、本に透明フィルムを貼る作業だ。
難しいだけあってこれができればうれしさと達成感もひとしおのはずだ。
フィルムと本の間に気泡ができるのは当たり前。あらぬところにくっついてシワシワになったり、カバーがずれたり、本がヨレたり、本が閉じられなくなったりという失敗を必ずする。
という説明をした直後、ふたりとも一発で完璧にやりこなし、うろたえた私がフィルムと本の間に気泡をこさえたり、あらぬところにくっつけてシワシワにしたり、本をヨレさせたり、閉じられなくさせたりした。
ひっぱがして必死にやり直す私を、中学生2名は大丈夫ですか、と心配してくれた。
立つ瀬がなくなった私は元気よく「おトイレに行ってきます!」と席を立った。