平泉町は、さすがの貫録であった。
世界遺産を看板に掲げるはずである。
流れている空気が圧倒的にたおやか。
都である。
町のひとが突然「まろは」と自己紹介を 初めてもあたしゃ驚かないよ。
語尾に「おじゃる」をつけたって、そりゃつけましょうとも、と納得しますよ。
町並みは大人だし、街路樹が柳だし。もうこの柳の風になびく様だって、とんでもなく風流で、初々しい緑色だってあんた、職人がお染めになったんじゃございませんか、といいたくそれほど、美しく鮮やかなんだからぐうの音も出ない。
時間の流れがゆったりとした風となって吹いている町だと思った。
このご時世のため電話収録。
平泉FM 世界遺産ひらいずみ様、お声がけいただきまして、ありがとうございます。
7、8年前、私が「いっしょにアんべ」という児童文学でデビューする前に、応募していたエッセイ「五回目の正直」を、先月末にこちらのラジオ局さまで読んでくださったのがきっかけで本日の収録となった。
内容は、当エッセイのことと、平泉町に関する思いである。
何がすごいって、パーソナリティの方のポジティブさだ。
もともと、ラジオを聞いていると楽しい気分になるし、怖いニュースも大袈裟に怖がらずに聞ける。
パーソナリティ吉田さんの口調は快活で光がキラキラと弾けるよう。繰り返しますが、ラジオは耳で捉えるものなのに、光を感じるのだ。
とことんプロ。
そしてその声。透き通るような美声だ。ウグイスやカナリアと渡り合える美声である。
私なら、牛のゲップとか、すっぽんのぼやきとかとならなんとか勝負できそうだ。
収録前のちょっとした雑談で、パーソナリティの方が「わたしたち、同い年なんです!」と言うので、「え~、ほんとですか(マジかよこの声)」とたまげた。20代前半だと思った。
収録は、おしゃべりが鬼のように苦手な私らしく、始終へどもどしていた。
「ああ、ええと、そのぉ……」
といった感じで、時間が限られているだろうに思う存分、へどもどしていた。
へどもど劇場であった。
私がパーソナリティだったら「ぅおいっ、気を確かに! 目を覚ませ! グランド10周してこい!」とどやしつけていただろうに、さすが素人相手に渡り歩いてこられているプロは違う。
そうなんですね~、で、こちらはどうでしたか? その時はどう感じましたか? など、うまく引っ張って行ってくれる。私のように道でも人生でも思考でもあらゆるところにおいて迷子になる馬鹿とはモノが違うのだ。
ただただ、すごいなあ、素敵だなあ、と頭の片隅では感動し、耳では聞きほれ、視界では光の瞬きを見て、あの平泉の風に含まれる瑞々しい香りを鼻によみがえらせていた。
放送日が決まりましたらTwitterなどでお知らせいたします。
お耳汚しではございますが、お時間のある方(4分程度)、どうぞお耳を拝借したいです。
またお伺いします、平泉町。