耳孔にズキズキと響く絶叫。
耳から心臓に伝わり、痛みを発する貫かれる痛み。
本気、狂気、殺意、動悸。
寝ぼけ眼で見まわし、鳴き声の出所を確認。
時計。
そうでしょうよ。そりゃそうでしょうよ。
寝ているときは人でも物体でもなく、液体になっている私は、布団からずるずると這い出て、全力で手を伸ばして叩く。
叩いても叩いても音はやまない。なにこれ。どうなってんの。
叫びまくるこの時計、サイコパスでらっしゃる?
明けきらぬ朝っぱらからテンションブチ切れの絶好調か、ご乱心でらっしゃる?
時計、今にも走り出しそうである。
時計だから許されるのであって、これ人間だったら、朝3時に奇声を上げ走り出したら通報ものでしょう。
朝っぱらから奇声を発する時点でアウトだけど。
(てか、3時にセットて。誰のいたずらか、恨みか、超常現象か)
狂気な時計を止めねば、息の根を。
てっぺんの突起を押せばすむのに、私は何を思ったのか、裏のふたをひっぺがえして電池を抜いた。
殺(ヤ)られる前に、殺(ヤ)らねば、という
極限状態の心境だったのだろうか。
ところで、目覚まし時計というやつは、本当に起床を促すのが目的なのだろうか。
夜討ち朝駆けっつー言葉がございましょう。
心臓が痛いんだってば。軋んじゃうんだって。
今朝の仕打ちからして、
時計は、実のところ、ミジンコのうんこくらいの心臓しか持ってない人間を永遠の眠りにつかせようとしてるんじゃなのか。