聞く気はない。
岸部一徳のとぼけたつかみどころがない雰囲気も、もっすごく好きで、
私はずっと、こういう場面を描きたいと思って書いている。
このそこはかとない、面白味。
味。
妙。
間。
空気感。
いつか、描きたい。
そして気になるのが、縁側からふたりが見ている景色はどんなものなんだろうということ。
自分ちの草ぼうぼうの庭なのか、隣の家の錆びた物干し竿なのか、鐘撞堂を備えた苔むした由緒あるお寺なのか。
彼らが住まう古い家は見晴らしのいい高台に立っている様子もなく、下町のもしかしたら混み合っている住宅街の中に埋もれているのかもしれない。
秀じいは、息子には厳しいが、ご近所さんを前にすれば、老獪を発揮してうまくやっていそうな気配があり、一徳は天然のとぼけっぷりでこれまたうまくかわして生きていそう。
一徳の職業は教師とか、団体職員あたりかもしれない、などと想像する。多分、一徳は高給取りだ。高給取りだが、欲がないからいい家に住みたいとかいい物を着たいといった方面に思考が向かない。
だからあんな雨漏りしそうな家にいつまでも甘んじている。
だからいつもテロンとしたチノパンと木綿っぽいシャツ一択。
なんて素敵なんだ。
一徳は買い物に行くと嫁について歩いているうちに、はぐれて好きな商品のところに行って見入っていそうなタイプ。小さい子が好きそうな景品付きのキャラメルとか、しゃがんでじっくり見てそう。こっそり買い物かごに入れて嫁に「返してきなさい」と叱られるタイプ。
買い物後の荷物は持たずに、嫁に持つように言われなきゃ気づかない。
そういう、鈍感でのんきなところがありそう。
高給取りで、欲がなく、あんなにのんびりした性格(設定)で、毒がなさそうなのに、なぜ嫁と別れた(設定な)のか気になるところ。
深い、キンチョールのCM。
水性を謳っていながら、なんか濃いキンチョールのCM。
今年も、夏は毎年やってくる。