パーマ屋さんに行ってきた。
私は美容院が苦手である。
凶器を手にした人間がすぐ後ろに立っているのだ。この状況はまともじゃないだろ。
なので私は嫌なのだ。
そう思っていたが、実は別の理由もあることに気づいた。
おしゃれな雰囲気が苦手なのだ。
おしゃれな場所も苦手なのだ。
おしゃれな人も苦手なのだ。
そして美容師さんは、白いツルの眼鏡をしていた。
白いツルの眼鏡に、装飾が施されていた。
白いツルというだけで、たいがいなのに、その上装飾である。
こうなると苦手というか、世界が違いすぎて及び腰だ。お手上げだ。
「きょうはどうしましょう?」
美容師さんに聞かれて、とにかく短くしてほしいということを伝えた。そしてできればパーマもかけたいと伝えた。
「はあ。パーマはどうですかねえ……」
美容師さんのいまいちな反応。私はてっきり
「パーマいいですね(売上)! そうしましょう(売上)! がっつりパンチパーマで行きましょう(売上)!」
と乗ってきてくれるかと思っていたので、意外だった。
「お客さんには合わないんじゃないでしょうか。老けますよ」
丁寧語での否定って、覚悟を迫ってるようで怖い。白いツルだし。
「とりあえず、切ってみてから判断しましょうか。そうしましょう」
自宅にいるのに帰宅したいと駄々をこねる認知症患者を説得するような口調で、説き伏せられ、私はうなずいた。
基本的に、こういう髪型がいい、というものは私にはない。
邪魔にならなければいい。そのためには短ければいい。
自分についてあれこれ考えたくはないのだ。
耳元で機械がうなった。
何!?
バリカンだ。
これまでの人生で、バリカンを頭に当てられたことはないかもしれない、あまり記憶はないが。
一時間後。
刈り上げられていた。
耳の上。
ツーブロックというらしい。かつて、男子高校生と学校側でもめた、いわくつきのツーブロック。
その上から、さらに上方の髪の毛を帽子のようにかぶせられた。
一見すると刈り上げているようには見えない。
でも、帽子をめくるとしっかり刈り上げ。
そして、しっかりどんぐり。
どこに出しても恥ずかしくない、仕上がってるどんぐり。
これで森の中にうずくまってたら、大きいどんぐり。はてしなくどんぐり。
私の場合、どんなに腕の立つ美容師でも、そうなっちゃう。
でもさすが、美容師。
スタイリッシュ感は残っている。どんぐりだけど。
やったぜ。