確定申告書を役場に提出してきた。
去年、同書類を役場に持っていったら、若いお兄ちゃんが「あれぇこれってなぁんだろぉ」という全くピンときていない顔で受け取ったので、すかさず不安になり、役場を出てから、
ひょっとして、あのお兄ちゃんは事の重大さを分かっておらず、申告書でケツを拭いて便所に流すかもしれない、県境にいるヤギのユキちゃんに食わせるかもしれない、風呂の焚きつけにするかもしれない。
などと、不安材料がこれでもかと膨れ上がり、引き返して取り返そうかと思ったのだ。
白髭のユキちゃんに紙を見せたほうがよほどぴんときた顔をしたに違いない。
ユキちゃんなら
「ああ、はいはい、今年もやってまいりました。申告・春の税まつり。これはあたくしがこっちでうまく処理しておきますんでご心配なく」って、口をもぐもぐさせながら、引き取っただろう。
その書類が税務署に届くかどうかは別の話だけど、それでも自信満々に受け取ってくれて、私は特に根拠もなく「これで一安心」と胸をなでおろせたに違いない。
そして今年。
若いお姉ちゃんがいた。
彼女は、てきぱきとなれた様子で書類をチェックし「はい、承りました」と引き取ってくださった。
口をもぐもぐもさせてなかったし、白髭もたくわえてなかったから、ちゃんと税務署に届くであろう。