以下から、承ります。よろしくお願いいたします。
ほぼほぼ宣伝ブログになってしまって申し訳ないです。
宣伝です。
2024年2月29日に徳間書店さんから「小田くん家は南部せんべい店」が出版されます。
町内の小山田せんべいさんに取材しました。
店主のヨシオさんが大変気さくで愉快な方で、取材が楽しかったです。
朝6時半という、普通だったら喧嘩になるか通報される時間帯に突撃取材をさせていただきとても勉強になりました。
南部せんべいは、北東北でよく食べられている古くからのおやつです。
基本形は、小麦粉、塩、重曹のみで焼かれ真っ白。本当に雪のように白いです。重曹の量が多いと黄ばむらしいです。
また、何十年焼いていても失敗はするそう。焦がしたり半生だったり。
拙作でも触れていますが、せんべい焼き窯にも癖があるそうです。
焼いている姿はとても70歳を超えているように見えませんでした。キビキビとスピーディーでリズミカルさはもはや美しい。直径10センチほどのせんべい型にぺっぺっぺと餅(生地)を投げ込むんですが非常に正確です。
直径30センチほどのごみ箱に、距離にして50センチのところから投げ込んで明後日の方向に外してしまう私からすると、神業です人間技じゃないみたいです人間じゃないみたいです。
やがて焼き窯からいい香りが立ち上ります。パンの焼けるにおいとは違ってイースト菌の香りがない分、シンプルであっさりした香りです。
脈々と受け継がれてきた堅実な生活が表れているほっとする匂いです。
その部分も本書で表現できていれば、と思っています。
あまりにヨシオさんができた方だったので、「小田くん家は南部せんべい店」でのおじいさん、「よっしー」は真反対のキャラが出来上がりました。モデルは泉谷しげるさんです。
主人公の弘毅(こうき)ともども、大好きなキャラです。
私が一番好きなシーンは、悪ガキ3人が真剣に「ち◎こ」を連呼するところです。
書いていて「おまいら、もうそのへんにしたれや」と思ったものです。
徳間書店の編集Tさん。ゲラへのコメントと、花丸マークがほんとに励みになりました。43になっても花丸をいただくと心が華やぎます。
編集長N氏。初めてzoomにてお会いした時怖かったです。実際にお目にかかってもなお怖かったです(Tさん曰く、菩薩のようにお優しい方だそうです)。多くのアドバイスを頂戴し、小田くんちの世界が広がりました。ありがとうございました。
ぜひお手に取っていただけますと幸いです。
「小田くん家は南部せんべい店」は2024年2月29日徳間書店から発売です。
よろしくお願いします。
『お山の上のレストラン 七歳児参りのふっくらムニエル』は、2019年に発刊された 山の上のランチタイムの文庫版である。
単行本が文庫化されるのはこれが初めてでとてもとても嬉しい。
書き手としては、飄々とした店主の登磨に手を焼いた記憶がある。美玖のほうがよほど書きやすかった。
彼らがレストランを営むのは、葵岳。
こちらのモデルは、低い山だが難所もある地元の実在する名久井岳。名久井岳は周囲の山々と肩を組んで連なっている山である。横に広く伸びている。
子どもの頃、登った記憶がある。鎖場という、巨大な岩に杭が打たれて、つかまるための鎖が用意されている場所がある。そこを登るのが面白かった。
見晴らしがいい頂上の、新品の風を受けるのが気持ちよかった。体力を使い果たして食べる弁当は極上だった。
おやつは500円以内と決まっていて、当時はやっていた「ねるねる」という駄菓子を持って行った私は「なんで山の上まで来てこんな労働をしているんだろうか。こんなに疲れてるのに」と腑に落ちない気分になりながらねるねるしていたのを覚えている。
こちらの文庫には、単行本には未収録のあとがきを寄せさせてもらった。
私がいかに料理ができないかを具体例を挙げて切々とつづっている。涙なくしては読めない文章になったと自負している。
デザイナーの田中久子さん、挿画の小池ふみさん。温かみがあって軽快でそしておこげまでおいしそうなデザインと画をありがとうございます。
的確な修正をくださり、伴走してくださった編集のYさん、いつもありがとうございます。頼りにしてます。
お山の上のレストラン 七歳児参りのふっくらムニエル は中央公論新社から2024年2月25日発売です。
どうぞよろしくお願いいたします。
突然の告白。
おむすびが好き。
さて、新刊のご紹介です。
舞台は青森県。
本書の内容を力技でぎゅっと握るように言ってしまえば、
キッチンカーでおむすびを販売する短編集です。
主人公は私と違って、小食女子です。
食べたい気持ちはあるのに、ちょっとしかお腹に入らず、そのせいで割を食ってきた女性です。
書くにあたり、そもそも少食がどんなものか、リサーチから入ったのを覚えています。
キッチンカーということで、県内の名所を回ります。
1章は種差海岸。芝生が整備されてとても美しい場所です。
清々しい芝生の緑。
目に染みる波の白。
透明感のある空の青。
ウミネコが自由に舞っています。
ここで、主人公の女性・茉奈とキッチンカーの店主・柴田が出会います。
柴田は不愛想極まっています。書いていて笑っちゃったくらい不愛想ですが、一方で笑っちゃうくらい可愛い(当社比)ところがありました。
茉奈は勝ち気で闊達、明るい突っ込み役です。
茉奈が苦手な食材からのスタートです。
2章は秋。階上町にある銀杏木窪の大銀杏の下での販売です。この銀杏、樹齢推定1,000年の堂々とした巨木で、青森県指定の天然記念物です。実際見に行くと圧倒されます。迫力満点です。地を這う枝が臥龍に見えるカッコよさもあります。
私が行った時はちょうど葉っぱが黄色く色づいており、あたりの空気まで黄金色に染めていました。
大きいのにしん、と静かで(木が大きいからと言ってやかましいということもないのですが、なぜか「大きいのに静かだ」と思いました)、時折、梢から鳥の声が聞こえていました。
ここで、茉奈たちが出会った老夫婦のお話です。私が愛してやまないワンコも出てきます。ワンコ、可愛い。めっちゃ可愛い。
3章は冬の小川原湖のワカサギ釣り。三沢市の北にある大きな湖。毎年たくさんの釣り客がやってきます。八戸市からは車で一時間くらいでしょうか。
茉奈の後輩と、茉奈の先輩、それから会社の縦社会が絡んできます。彼らのやり取りを眺めながら、あ~あなんてこった、と思いました。
ちなみにこの章に登場するシーンに関して、三戸消防署さんにもお話をうかがいました。ご丁寧に教えてくださり、誠に感謝申し上げます。ありがとうございました。
(取材は、いつになっても慣れない)
4章は春。店主・柴田がキッチンカーをするに至った経緯が明らかになります。また商売は一筋縄ではいかぬものだし、だからこそそのトラブルを攻略した暁には、別な世界に立てるらしい、というのも、ああだこうだともがいたり工夫したりする彼らを見つめながら知りました。
茉奈がかつて取り組んでいて、今はもうやめてしまったことを思い出して、楽しみながら(←これ大事)再挑戦していく様にもご注目。
個人的には、茉奈が不愛想王の柴田に、畏れ知らずなツッコミをガンガン入れていくところが好きです。
各章ごとに、象徴する具が登場します。いずれも青森県産です。食べ物が育った土地で、そこの風や日差しの中で食べると一層おいしいですよね。
編集のMさんとはこのお仕事が最後です。
「柊先生」から数年にわたり大変お世話になりました。優しくて温かく、しっかりとしたご指示をくださいました。何より、殴られてもしょうがないポンコツな私を殴りはしませんでした(殴りたかったかもしれませんが、Mさんはおとなでした)ありがとうございました。心からお礼申し上げます。
つじこ先生には、温かみがあり爽やかで可愛らしい画を描いていただきました。大感謝です。ありがとうございます。
「養生おむすび『&(アンド)』 初めましての具材は、シャモロックの梅しぐれ煮」
2023年7月20日、集英社から発売です。
どうぞよろしくお願いいたします。
この度、「バカ塗りの娘」という映画になる「ジャパン・ディグニティ」の新版です。
2014年に出版した「ジャパン・ディグニティ」に、アフター物語「あとは漆がうまくやってくれる」を収録しました。
津軽塗職人・美也子とオランダへ尚人とともに渡ったユウたちのその後のお話です。
美也子は日々、津軽塗に向き合っていますが、淡々とやってきた仕事の雲行きが怪しくなっています。
そこに、隣家に住まう吉田のばっちゃが、あることを頼みに来ます。
その依頼を完遂するべく、美也子はリモートでオランダのユウたちにも協力を頼みます。
さて、うちの町には映画館がないです。
映画館はないけども、映画は見たことがあります。時は小学生の夏休み。場所は公民館です。
「11ぴきのねことあほうどり」と「うちのタマしりませんか?」の二本立てでした。
ゴザの上に座って、大型の扇風機が回る中、汗を流しながらの観覧。遠くのしわぶきや、煎餅の音。おしりの痛さとゴザの香りと、おばあちゃんのシップの匂いと赤ちゃんのおむつの匂いがして地味に大混乱した中での観覧でしたが、その当時はあまり気になりませんでした。なにしろ暗幕が張られただけで私たち小学生は大興奮だったのです。
見終わったあと、猛烈にコロッケが食べたくなったし、その辺を歩いている猫を片っ端からタマと呼びました。猫は賢く、たいていの猫は聞こえないふりをしました。
この時、まさか自分が書いたものが映画になるなどとは夢にも思っていません。
というか、自分が小説を書くようになろうとは毛ほども思っていません。
ただただ、公民館に映画が来ると聞いて駆けつけ、初めての映画を見て感動し、そして走って帰って、スイカをナタで割っている祖母に「テレビがでかかった! コロッケがこーんな大きかったよ! タマがかわいかったよ!」と汗とつばきを飛ばしてまくし立てました。
恐らくこの時の将来の夢と言ったら、巨大なコロッケを食べることと年金生活だったと思います。(今の夢は、胃もたれにより巨大コロッケはあきらめましたが、年金生活だけはあきらめてません。)
この度の映画「バカ塗りの娘」。
試写会で拝見しましたが、弘前の岩木山、美しい景色、四季、日々の暮らし、眼差し、人々の生き方、人生の選択。
それらがたっぷりと詰まっていました。
ぜひ、ご覧ください。
既刊を読んでくださった皆様、アミューズ様、ハピネット・
また、アフター物語を書くにあたって、津軽塗作家の白川明美様@urushiakimiにご教示いただきました。的確で明快に教えてくださり、とても助かりました。「隣の晩ごはん」的(そういう番組がかつての日本にはあったのですよ)急な取材にも快く応じてくださり感謝のしようもございません。
表紙を手掛けてくださいましたとみこはんさん@tomikohan 消しゴムハンコのガーベラ、カラフルで、とても愛らしくて品があって大好きです。
編集のFさんは、ジャパンディ・グニティを暮らしの小説大賞に応募した2013年時からのおつきあいです。
当時、書籍化に際してFさんが弘前市にお見えになり、コンビニで地元の新聞を購入していたのを覚えています。仕事熱心な方だなあと胸を打たれました。
ちなみに私がコンビニなるものに入ったのは、その時が初めてでした。子どもの頃の個人商店のように、入店時に音楽が鳴ったことに郷愁を掻き立てられました。コンビニというものが新しいのか古いのか分からなくて不思議でした。また、「あらっ棚が低いわっ」と感動したのを記憶しています。
Fさんは、執筆の右も左も分からなかったぴよぴよたまひよの私に根気強く伴走してくださいました。当時は、編集さんが口にする「ゲラ」も「ルビ」も分かりませんでした。ゲラに書かれた「トル」という文字が、私には地図記号に見えていました。
私の原稿は、いくらでも悪いところを挙げられるでしょうに、苦心に苦心を重ね、顕微鏡をもってして探し出した微生物サイズの良いところを見つけて、励ましてくださいます。
執筆の能力や力は今も当時と変わりません。というか、ぴよぴよっぷりによぼよぼっぷりが加わったのでさらに手に負えなくなっているはずで、大変すまないと思いつつ、大概開き直っています。
多くの方から助けていただきました、
「新版 ジャパン・ディグニティ」は 2023年7月18日発売です。
どうぞよろしくお願いいたします。
まあ私は不器用である。不器用斬り込み隊長である。
卵は黄身ごと殻を割る。珈琲の粉はドリッパーに入れる前にドリッパーにぶつけてそこいらじゅうに巻き散らす。ドアが開く前に入ろうとしておでこをぶつける。人間関係がうまくいかない。
幸いにも不器用っぷりを発揮する場面は犬が棒に当たる確率より高いため、まああらゆる面において遺憾なく不器用の有り余る才能を発揮できているわけだ。
昨年から、手芸関係を書き続けている。苦手なのに、しれっとした顔で、なんなら得意ですが何か、的な風情を醸し出してそれらしく書いている。
もちろん、お繕いは上手じゃない。嫌いじゃないけど。
そう、困ったことに手芸は嫌いじゃないのだ。ただ上手でもないのだ。
そして今回の新刊。
「お直しで大解決! ダーニングヒーローズ」
元気いっぱいで勝ち気な天然系の女子と、不愛想男子がお繕いを通じて町を救わんと「竜の目」と呼ばれる沼・ドラゴンアイに乗り込むのである。
ドラゴンアイは岩手県八幡平に実在する沼。
去年、実際に見に行った。
その日は6月上旬だったのに、みぞれが吹き付けていた。
死ぬかと思った。
雪中行軍、という四字熟語も頭に浮かんだ(四字熟語と言っていいのか)。
私はただ、紙に物語を落としたいだけなのに、なんだってこんな吹雪の中、泣きべそをかきながら雪をこいで行軍しているのだ。なんの懲罰か。私が何をしたというのだ、思い当たるふしが108つあって、絞り切れないじゃないか。
死ぬ気で行ったものの竜もまだ冬眠中だった。半眼だった。半分白目をむいていた。爬虫類だから寒いのは苦手だもんな、と思った。竜が爬虫類かどうかはさして検討しないままそう納得した。
当書はSDGSの意味も含めてある。
岩崎美奈子さんの絵が透明感があってとってもキュート。ジーッと見入ってしまう。特にウサギの可愛さは尋常じゃない。ありがとうございます。
編集のM氏、どうしようもない私の原稿に根気強くあたって道を作ってくださいました。大変にお優しくて、真剣にご指導くださいました。心底感謝しております。
文研出版から5/11発売です。
どうぞよろしくお願いいたします。
この度、東奥文化選奨を受賞しました。
連絡をいただいたのは2月頭。仕事の昼休み中だった。
昼ご飯を持参するのを忘れて出勤し、ロッカーをあさったらひと月前に賞味期限が切れたフリスクと、昨日切れた梅のグミを見つけて、かじりながらひもじさに打ち震えていたところだった。
電話が震え、こっちだって震えてる最中だ一体何事かと出たところ、
「トウオウブンカセンショウにノミネートしました」
と、言われた。
当局が言う聞き慣れない単語になんのこっちゃと思ったし、何か応募していたかしら、と思い出そうと決死の努力もしてみた。
なにも思い出せなかった。
昼飯も忘れてくる人間に、何を思い出せるというのか。
それならば仮説を立てるしかない。
ひょっとしたら私が寝ている間に、奇特な方が私の名前で応募したのかもしれない、芸能事務所に入るパターンみたいに。
なんにしても、株を買えとかツボを買えとか何かしらを買わせる電話ではないようだし、携帯電話を切らずに今すぐATMへ走れ、と要求しているようでもないということは理解できる。
ポカンとしたまま「はあ、へえ、ほお、はあ」と返事をし、くれるものなら何でももらうの精神で「ありがとうございます」と電話を耳に当てながら頭を下げた。できれば昼飯をくれとも思ったが、これは辛うじて黙っていた。
電話を切ってから、googlの検索バーに「トウオウブンカセンショウ」と入力した。
サイトがあり、読み進めていって驚いた。驚くのが遅すぎる。突然横から「わっ」と驚かされて、翌日に驚くようなものである。そんなんだから昼飯も忘れるのだ。
授賞式が始まるまで、ゆったり椅子に座って「やっほー嬉しいな嬉しいな」とはしゃいでいた。ところが状況は一変する。受賞の言葉があると聞いたのだ。ただならぬほど緊張する。ガチガチだ。背もたれに背中がつかないほどビシャッと伸ばして硬直。
3歳の時に絵画の授賞式で賞状をくれる会長さんに、会長さんの後ろに積み上げられている商品のひとつを指し「あれがほしい」ときっぱり要望した勇気と根性とそれらを凌駕する図々しさよカムバックと祈っていたがカムバックはかなわなかった。
東奥文化選奨授賞式の場で唯一できたのは、会長さんがトロフィーを差し出す前に、手を伸ばしていたことくらいだ。
お食事会ではビールばかり摂取していた。緊張が尾を引き、ぜんぜん酔わなかった。バリッバリに目をかっぴらいて、飲んでは名刺交換をし飲んでは名刺交換をし、をくりかえしてほぼわんこそば状態だった。
多くの方と知り合い、交流が持ててありがたかった。
書き続けさせてくださる方々がなかったら、いただけなかった賞である。ありがたいことだ。ただただ感謝でいっぱいだ。
多くの方に力をいただいてきたし、ご助言をいただけたし、励ましてもらってきた。周囲にはご親切でしっかりしている方が多かった。とても助けられてきた。
そのことを改めて認識した。
この受賞を機会に、今度は自分が多くの方の力になるべく、笑えてホッとして、前を向ける小説やエッセイを書いていこう。
ありがとうございました。