青森県にて小説と児童文学を書いています。  著作物は、右側の「このブログについて」をクリックしていただき、URLのリンク先にあります。よろしくお願いいたします。

アナフィラキシーショック


f:id:takamorimiyuki:20200810081349p:plain


昨日の日曜日、仕事から帰ったら、誰もいなかった。戸は開けっ放し。
父は、散歩に行ったのかなと思った。
開けっ放しで散歩とか、こっちの地域では割と普通にある。
不用心にもほどがありましょう、と思いながら、私はのんきに開けっ放しでパソコンで遊んでいた。
 
19時ごろ、弟が帰ってきた。父の引き出しを開けているので、何してんだろうと思ったけど放って部屋に戻った。
基本的に、大人同士なのでお互い干渉しないうち。
そしたら、呼ばれた。
なんすか,と行ってみた。
「親父が刺された。入院した」
びっくりした。(弟と会話したのもびっくりだけど)
「誰に」
「蜂」
「………………………………はい? はちにさされてにゅういん、って何」
それまで、鼻づまりで入院、と同じくらいのレベルだと考えていた私はキョトンとした。
 
話を聞くと、
庭のスグリの木にアシナガバチが巣を作っていて、父は、あろうことかこれを箒でフルスウィングしたという。
蜂にしてみたら
「ええええ! 何だこの野郎、やろってのか!」
てなもんである。
 
で、刺されたのが、17時過ぎ頃。
刺されたのは2回目なのでアナフィラキシーショックが強く出た。
(1回目は、数年前、山菜取りで刺されたが、入院まで至らなかった)
 
弟は二階にいたのだが、父に呼ばれて、代わりに病院に電話をした。
父は病院に歩いて向かった(近い)。
 
弟は、父がしっかりしていたので、一人でも大丈夫だと判断したらしかったが、それでも、私と違って厚情温和の彼は、ふと気が変わり、後を追ったそうだ。
父は途中で一度うずくまった。
弟が駆け寄って肩を貸したが、そこから数歩のところの病院の敷地内の芝生の上でダメだった。
父はあおむけに倒れた。
弟は目の前の病院に電話をした。
病院職員がストレッチャーで駆けつけてきてくれた。
女医さんが救急外来を担当していたそう。
上の血圧が50。
父は普段、血圧の薬を飲んでいて130くらいだ。
ちなみにキリンは252
さらにちなみに私は98 調子が悪いと80
 
お医者さんから、あと10分遅かったら、死んでたと言われた。
3回目はないと思ってください。
あそこまで悪くなった患者を診たのは初めてです。
 
彼女に、いいご経験をさせてあげられた、父よ。
おっかないことをいうが、病院のひとたちはとても対応がよかったという。
刺されたらすぐに救急車を呼んでくれとくぎを刺されたそう。
 
私たちは、着替えなどを用意して持っていった。
父は「回復室」というナースステーションとつながった部屋で、鼻に管をつけ、腕に「生理食塩水」と書かれた点滴をしていた。
父の腕は太くて日に焼けている。
さいころ、私と弟を両腕にぶら下げてぶん回してくれた腕だ。
ものすごく子煩悩な父。
 
顔はまだ腫れていた。おでこを刺されたらしい。
でも意識はあって、ちゃんと会話できた。
これまで、私は病院のベッドを背景にした大事な人を数人、見てきたが、
70近い父であるが、入院している姿を私は初めて目の当たりにした。
父は、起き上がらないままに会話した。
「病院さ来てからよぉ、震えが始まってよぉ」
 おそらく点滴のためだと思われる。
「苦痛はあったの?」
「にゃ(いや)。痛くもかゆくも苦しくもねぇでよぉ、モッカド(腫れているような感覚で、意識混濁)してるばし(だけ)だったなあ。あっけねもんだなって思ったよ」
 はははと笑っていた。
 
真っ暗な帰り道、弟に「あんたがいてくれて助かったよ、ありがとう」と言った。
弟は、うん、と答えた。
 
 
 今日にも退院できるという。
 
余談だが、庭のスグリの木に関しては、私もそばを通っているが、アシナガバチが私に近寄ってきたことは一遍もない。
 そういえば、いつも私だけ蚊に刺されやしないんだった。
 よほど。。なんだろう。