青森県にて小説と児童文学を書いています。  著作物は、右サイドバーの著作物一覧からご確認いただけます。よろしくお願いいたします。

3センチがゆく👴

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いつもと同じだとほっとする。

 

違うとドキッッとする。

 

毎朝すれ違うおじいちゃんがいる。

腰が曲がっていて、金属製の杖を突いて、約3センチ歩幅で小刻みに歩いてくるおじいちゃん。夏でも毛糸の帽子をかぶっている。

散歩だろう。なぜそう思うかというと、登校や出勤などをしているようには見えないからだ。

 

私とすれ違う時、必ず1メートル手前で、ピタッと止まる。フェイタス貼ったようにピタッと止まる。一歩も動きません、一歩もずれません、というように。私はおじいちゃんをよけて歩いていく。

毎日。

 

で、今朝。

おじいちゃんが止まらず、私の横を通り過ぎたのだ。3センチ歩幅で。

ドキッとした。

私がビタッと止まってしまった。

 

じさま(おじいちゃんという方言)、もしかして、おらのこと見えてねんだべか。

じさまの目が悪くなったのか、

おらが透明人間さなったのか、

じさまの認識能力が緩くなったのか、

それともついに、知らぬ間におらが忍者さなって隠れ蓑の術ば発動してしまっただか。

 

振り返れば、おじいちゃん、3センチ歩幅で歩いていく。

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おじいちゃんが角を曲がるまで、見ていた。

 

その後、喜びがこみあげてきた。

よっしゃー!見えてないなら今日は仕事行かずに遊びに行こう! とりあえず荷物を図書館のロッカーに放り投げて身軽になってからだーー!

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と喜び勇んで図書館に行ったら、

おはようございます、時間ギリギリでしたね、

と挨拶されました。